広がる子どもの健康格差 病院に行けず、保健室で治療も

2009年10月1日  朝日 親の経済格差は教育格差にとどまらず、「健康格差」となって児童生徒に広がっている。治療費がなく学校の保健室で治そうとする子、健康診断で異常が見つかってもなかなか再検査を受けない子……。格差社会の広がりとともに状況は悪くなる一方だといい、現場の養護教諭らは改善を訴えるために全国の事例を集め始めた。

 北海道立高校の養護教諭(41)によると、6月、体育の授業で足首をひねった2年生の男子生徒が保健室にやってきた。腫れ上がった患部を湿布で手当てし、「靱帯(じんたい)が切れているかもしれないから病院に行った方がいい」と言い聞かせた。

 ところが次の日も、その次の日も「湿布はって」とやってくる。話を聞くと、生徒は母子家庭。「家には湿布なんかないし、買ってもらえない」「病院に行かなくてもそのうち治る」と言った。

 保健室は本来、初期の手当てをして医療機関につなぐまでが役目だ。しかし、そんなことを言っていられない現実がある。

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 別の2年生の男子生徒は「頭痛がする」と言って、1年前から毎日、市販の鎮痛薬を飲んでいた。「薬ちょうだい」。そう言って、保健室にもよく顔を出す。心配で、母親に「一度検査を受けた方がいい」と手紙を出した。でも、返事はない。校医に治療勧告書を書いてもらい、母親はようやく生徒を病院に行かせた。幸い大事には至らなかったが、放っておけば脳梗塞(こうそく)を起こすおそれがある状態だったという。

 この学校は、全校生徒の4割が生活保護を受けている。歯科検診では虫歯が8本以上ある生徒が1割を超え、中には20本ある子も。親は日々の暮らしで精いっぱいで、子どものころに歯磨きの習慣をつけてもらっていない生徒が多いという。

 「何かあったら治療を受ける、という発想や習慣が全くない。学校を出て、この先ちゃんと暮らしてゆけるのか」

埼玉県の養護教諭(47)が勤務する県立高校も、生活保護世帯やひとり親の家庭が多い。授業料や生活費をアルバイトでまかなう生徒も多く、新入生の3分の1は初年度のうちに退学していく。

 「おなかすいた」。こう言って保健室にやってくる生徒のために、この養護教諭はビスケットやアメを自腹で常備している。話を聞くと、前の日から食事をとっていない子がざらだ。体温や血圧が低く、体育の授業中、うずくまったり壁にもたれたりしてやり過ごす子も多いという。

 学校の定期健診で再検査が必要になっても、生徒からまず出る言葉は「検査代はいくら?」。自己負担になる再検査では、例えば心電図だと5、6千円かかるという。再検査を促し、ようやく受診して問題がなかった生徒の保護者からは「お金が無駄になった」と苦情を言われたこともある。「お子さんのためにはよかったんです」と返すしかなかったという。

 子どもたちが経済的に苦しんでいる様子は統計にもはっきり表れている。文部科学省の調査では、学用品や修学旅行費などを公的に負担する「就学援助」の対象となる小中学生は、この10年で約78万4千人から約142万1千人と1.8倍に増えた。都道府県立高校で授業料の減免措置の対象になっている生徒も、約11万1千人から約22万4千人へと倍増している。

 7月に愛知県で開かれた全日本教職員組合の養護教員の会合でも、子どもたちの窮状が相次いで報告された。これまで埋もれていた親の経済状態と子どもの健康の関係について掘り起こそうと、各地の教員に報告を呼びかけている。(中村真理子)

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