JR不採用訴訟、二審も組合差別認定 解雇無効は認めず

2009年3月25日15時5分


 87年の国鉄の分割・民営化でJRに採用されず、90年に解雇された国鉄労働組合(国労)の組合員と遺族304人が「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(旧国鉄清算事業団)に雇用関係の確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は25日、10人を除いて1人当たり275万~550万円(総額15億700万円)を支払うよう機構に命じた。解雇無効を認められなかった原告側、機構側とも上告する方針。

 南敏文裁判長は、05年9月の一審・東京地裁判決と同様に、解雇は有効▽国鉄が組合員をJR採用予定者名簿に記載しなかったことは不当労働行為に当たる――と認定。1人あたり一律500万円(総額14億1500万円)の慰謝料を認めた一審判決から、大半の原告について50万円を増額した。また、自ら再就職先を辞退した一部原告については、慰謝料を半分に減額したり、請求を棄却したりした。
 解雇は組合差別による不当労働行為で無効だと訴えた元国鉄職員の集団訴訟で高裁の判断は初めて。原告団は、原告を含む1047人の解雇者が生活維持のために起こした事業への支援や退職金の支払いなどによる「政治決着」を求めている。二審でも不当労働行為が認められたことで、国や機構側は解決に向けた対応を強く迫られたといえる。

 判決は、所属組合によるJRへの採用率の差について「国労を脱退したかによって極端に採用率が異なり、採否を分ける決定的原因になったと推測できる」と指摘。ただ、組合差別がなければJRに採用されたという因果関係は認めず、不公正な選考で採用の可能性を断たれたことによる慰謝料だけを認めた。

 南裁判長は法廷で判決の理由を説明した後、「判決を機に1047名問題が早期に解決されることを望みます」と付言した。(河原田慎一)

国労差別、2審も賠償命令 解雇無効は認めず2009年3月25日 13時49分

 
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判決を受け厳しい表情の原告団=25日午前10時38分、東京・霞が関


 1987年の国鉄分割・民営化に伴う国労組合員のJR不採用問題で、組合員と遺族計約300人が、旧国鉄清算事業団の一部業務を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、解雇無効と慰謝料など約300億円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が25日、東京高裁であった。

 南敏文裁判長は1審同様、旧国鉄に国労に対する差別があったとして、原告組合員の大半に対する1人当たり550万円の賠償義務を認定。総額約15億円を支払うよう同機構に命じた。雇用関係の確認請求は「不当労働行為がなかったとしても、JRに採用されたとは限らない」として退けた。

 同種訴訟の2審判決は初めて。原告、機構側双方が判決を不服として上告する方針。

 南裁判長は、旧国鉄側の不当労働行為について「国労脱退の有無が採否を分ける決定的原因となった。旧国鉄側は国労を嫌悪、弱体化の意図を持っていた」と指摘した。

(共同)

JR不採用:国労差別、高裁も認定…慰謝料1人50万円増 毎日2009年3月25日 11時51分 更新:3月25日 13時45分


JR不採用問題の高裁判決が出され、「不当判決」と書いた紙を手にする酒井直昭団長=東京高裁前で2009年3月25日午前10時39分、佐々木順一撮影 87年の国鉄分割・民営化に反対した国労の組合員やその遺族計304人が、JRに採用されず、旧国鉄清算事業団にも解雇されたのは違法として、事業団を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構に雇用関係の確認や慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が25日、東京高裁であった。南敏文裁判長は「国鉄は国労弱体化の意図を持っていたと推認できる」と採用差別を認め、ほぼ組合員全員に1人550万円、総額15億700万円の慰謝料支払いを命じた。慰謝料額は1審より1人50万円増額した。解雇は有効とした。双方とも上告する方針。

 戦後最大の労働問題の一つとされるJR不採用を巡っては、05年の判決など二つの東京地裁判決が旧国鉄に賠償責任を認めたが、昨年3月の同判決は解雇時を起算点とする時効(3年)が成立しているとして組合員側が敗訴し、今回初となる高裁判断が注目された。

 国労などは解雇された全員の雇用や年金の保証などを柱とする政治解決を求めており、これを後押しする結果となった。南裁判長は主文を読み上げた後、「早期解決を望みます」と付け加えた。

 判決は、採用差別について「国鉄幹部の当時の言動にも、国労排除を考えていたとうかがえるものがある。不公正な選考で採用の可能性が侵害され、精神的損害を受けた」などと指摘。そのうえで、「55歳以上」など採用基準外だった10人を除き、賠償を命じた。

 旧国鉄側の時効主張については「03年の最高裁判決確定が起算点であり、成立していない」とした。

 JR各社の社員採用は、国鉄側が提出した「採用候補者名簿」を基にJRの設立委員が決めたが、国労を中心に分割・民営化に反対した組合員の多くが記載されなかった。

 最高裁は03年、中央労働委員会の救済命令を取り消すようJRが求めた訴訟で、「組合差別があった場合の責任は国鉄と清算事業団が負う」としてJR側を免責。その結果、一部組合員が旧国鉄を相手取る提訴が相次いだ。【坂本高志】



JR不採用訴訟:国労差別高裁認定 「仕事と生活返せ」放置22年、原告ら将来に不安 JR不採用の通知から丸22年。国による採用差別を訴えてきた国労組合員の願いが少しだけ、かなった。旧国鉄(現鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に賠償を命じた25日の初の高裁判決。原告や家族たちからは安堵(あんど)の声が漏れたが遠い解決への疲れと将来へ不安もにじむ。早期の政治決着を求める声が上がった。(毎日)

 午前10時半、東京高裁101号法廷。「不法行為があると判断しました」。南敏文裁判長が判決内容を読み上げると、傍聴席を埋めた組合員たちは「よし!」とうなずいた。だが、判決は採用差別を認めながら、解雇は有効とした。会見した酒井直昭原告団長(60)は「この判決では路頭に迷わないといけない。上告したい」と悔しさをにじませた。

 「当然の判断でうれしい。だが、納得できない気持ちもある」。北海道音威子府(おといねっぷ)村の自宅で連絡を待っていた杉山智子さん(50)は落ち着いた口調で語った。

 智子さんは82年、国鉄職員の均さん(50)と結婚。氷点下30度の中、線路を保守する夫の姿は誇りだった。だが、次男が生まれて間もない87年2月、JR不採用を機に人生は一転。国鉄清算事業団では再就職支援は全くなく、90年4月1日付で解雇。智子さんは組合員と家族の訴えを振り切って、逃走した事業団幹部たちの姿を忘れることができない。首切りに遭った1047人の大半は北海道や九州の国労組合員だった。

 智子さんは臨時職員などのパートで生活を支えてきた。「まじめに働いていた夫を国労というだけで切り捨てたことが許せない」。その思いは揺るがないが、不採用から22年がたち、長男は公務員、次男は会社員に。中学時代、新聞配達で家計を助けてくれた2人に申し訳なさが募る。また、1047人のうち、既に52人が死去し、原告の平均年齢も56歳になるなど高齢化しており、今後の生活は共通した不安材料だ。

 判決を機に「長い冬」は終わるのか。智子さんは「夫の仕事と元の生活を返してほしい。22年間放置されたことに見合う解決をさせるまで頑張りたい」と決意を新たにしていた。【銭場裕司、坂本高志】

 ◇今こそ政治決断する時--五十嵐仁・法政大教授(労働問題専攻)
 87年4月1日、国鉄はJRとなり、本州3社(JR東日本、東海、西日本)と3島3社(JR北海道、九州、四国)、JR貨物に分割・民営化された。再雇用を拒まれた人たちの苦難の歴史は、この時から始まる。働くものとしての誇りをかけた裁判の判決が25日に出たのを機に、分割・民営化が歴史的にどのような意味を持っていたのか、改めて考えてみる必要があろう。

 第一に、それは「官から民へ」の先駆けの位置を占めていた。国策によって債務を帳消しにされ、近代化と効率化を進めたJRは一種の「成功モデル」となり、民営化=善とも言うべき神話が生まれた。

 第二に、全国を網の目のように覆っていた鉄道の目は粗いものとなり、地方のコミュニティーの核となっていた駅が次々と廃止されていった。これに「平成の大合併」や「三位一体改革」、郵便局の整理・統合が続き、地方の疲弊と衰退がもたらされた。

 第三に、総評の中核組合であった国労や、左派の全動労(現・全日本建設交運一般労組)の組合員排除によって、労働運動全体が弱体化していった。1047人とその家族が北海道や九州で闘争団を結成していったのは、国策に反対する労組をねらい撃ちにした「国家的不当労働行為」の結果にほかならない。

 「国鉄解体」から、働くものが人間扱いされない時代が始まったといえる。不採用から丸22年という長きにわたる原告たちの苦悩を思えば、一日も早い解決を願わずにはいられない。働くものが報われる世にするため、今こそ政治が決断すべき時ではないだろうか。

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 ■人物略歴

 ◇いがらし・じん
 東京都立大経済学部卒業後、96年から法政大大原社会問題研究所教授。専攻は政治学、労働問題。新潟県出身、58歳。

JR不採用 二審も国労差別認定 東京高裁 雇用関係は否定2009年3月25日 東京 夕刊

 一九八七年の国鉄分割・民営化で、JRに採用されず、旧国鉄清算事業団からも解雇された国労組合員ら三百四人が、事業団の業務を継承した独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(横浜市)に雇用関係の確認と慰謝料などの支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は二十五日、一審同様に組合差別を認めた上で雇用関係を否定し、同機構に一人当たり五百五十万円の賠償を命じた。

 国労側代理人によると、東京地裁などで同種の五つの訴訟が係争中で、高裁判決は初めて。原告は北海道が二百四十六人、本州が三人、九州が五十五人で、提訴時から九人が死亡している。

 南敏文裁判長は「複数回処分があっても国労を脱退していれば、JRに採用される一方、国労に残留すると処分歴が軽微でも採用されていないなど、国労脱退の有無が決定的原因だったと推認できる」と、JRの採用時に不当労働行為があったと認定した。

 事業団の組合員解雇が有効か否かについては、事業団の再就職あっせん義務を規定していた再就職促進法が一九九〇年四月に失効した時点で、事業団と組合員との雇用関係も終了することが予定されていたとした一審判断を追認、原告側の主張を退けた。

 判決によると、原告の国労組合員は国鉄の分割・民営化が実施された八七年、JR北海道や九州などに採用を希望したが、採用候補者名簿に記載されず、不採用となった。その後、事業団に雇用されたが、再就職のあっせん期限が切れた九〇年に解雇された。

◆国労、機構側ともに上告へ
 判決後、記者会見した原告団の酒井直昭団長(60)は「不当労働行為があったと言いながら、五百五十万円程度の賠償で救済というのは不当だ。われわれはもう一回、路頭に迷わなければならない」と述べ、上告する考えを明らかにした。

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構は「機構の主張を認めず損害賠償を命じるものであり誠に遺憾だ。速やかに上告手続きを取る予定だ」とコメントした。

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