臨時国会で再審議『共謀罪』の論点は 東京新聞

 臨時国会で再び審議される「共謀罪」創設法案。先の通常国会では与党が民主党案「丸のみ」の直前までいったが「丸のみ成立、のちに修正」の思惑がばれ野党が反発。継続審議になった。その後、野党・日弁連から、政府による国連条約の解釈の誤りが指摘されるなど、法案を取り巻く状況も変化、政府の説明責任も問われている。臨時国会で予想される論点をまとめると-。 (市川隆太)

■共謀罪導入は義務なの?

 共謀罪導入論議が浮上したきっかけは、国会も承認した「国際組織犯罪防止条約」だ。政府与党は「条約五条で共謀罪か参加罪の導入が義務づけられている」と解釈したうえで、共謀罪導入を進めている。なぜ参加罪を選択しないのか、いまだにはっきりしないが、二重、三重の反論が出ている。

 (反論1)日弁連は「アメリカは、共謀罪を積極的に導入していない州があるため、五条を留保した上で条約を批准している。共謀罪を導入しないと世界から相手にされなくなるという政府与党の主張はウソだ」と批判する。

 (反論2)政府与党は五条の解釈自体を間違えているとの批判もある。米ニューヨーク州弁護士でもある喜田村洋一弁護士や「同時通訳の神様」と呼ばれる国弘正雄・元外務省参与らは「政府は五条を、反対に取り違えて訳している」と指摘。喜田村氏は「本当は五条は『共謀または犯罪結社に関する法的概念(参加罪)を有しない国においても、これらの概念の導入を強制することなく、組織犯罪集団に対する実効的な措置を可能にする』という意味です」と言う。

 日弁連や野党は「自分の国の法体系を壊すことなく、国際的な組織犯罪を取り締まってくださいという趣旨なら、凶器準備集合罪や組織犯罪処罰法がある日本は、五条を留保して条約批准できる」としている。

 (反論3)弁護士の中からは「百歩譲って、共謀罪か参加罪のどちらかが義務づけられるとしても、なぜ、共謀罪なのか。参加罪でよいではないか」という指摘も出ている。

 参加罪は「犯罪行為でなくても、行為主体が犯罪組織なら、それに参加した市民は罪になる」という「結社罪」のことだ。ただ、「組織犯罪集団への参加自体が罪になる結社罪は、憲法が保障する政治結社の自由に反する」との指摘も。

 この問題に詳しい弁護士が説明する。「たしかに、これでは、まじめな市民まで逮捕されるリスクが大きすぎる。国連審議の際、そうした極めてまっとうな批判を行ったのは、ほかならぬ日本政府だったのです。英国からも類似の修正案が出され、おかげで、条約は、結社罪ほどガチガチでなく、犯罪組織による犯罪行為の手助けになる可能性を認識していた場合のみ罪になる“広義の参加罪”を求める内容になった」

 この弁護士が続ける。「日本では暴力団が組織に入るよう強制すれば摘発できるし(暴力団員による不当な行為の防止に関する法律)、共謀共同正犯理論を広く解釈した結果、既に広範な共犯者逮捕が可能になっている。アメリカと違って銃の所持を禁じ、凶器準備集合罪もあるなど、組織犯罪対策は世界に冠たるものです。条約趣旨を十分に満たしているとして、今のまま堂々と批准すればいい」

■批准は「する」もの「される」もの?

 「共謀罪を導入しないと、国連条約の批准ができない」。共謀罪審議の過程で、こんな論法が広く流布された。

 先の通常国会終盤で自民・公明両党が「民主党案丸のみ」に動いた際もそうだった。丸のみの動きが浮上した翌朝、麻生太郎外相は報道陣を前に「民主党案のままでは条約を批准できない」と切って捨て「丸のみ撤回」の流れを決定づけた。

 ところが、法律家の間では「あの論法はおかしい」という声がもっぱらだ。日弁連関係者が言う。「条約の批准は主権国家からの一方的な意思表示であって、なにも、国連に審査されて『日本は批准させない』とか言われるわけではないのです。だから、条約趣旨に合った法制度が備わっている日本は、胸を張って批准できる。共謀罪を導入する必要などないのです」

■越境性

 「国際組織犯罪防止条約」なのに、なんで窃盗や公職選挙法違反、はたまた道路交通法違反にまで共謀罪を設けるのか不思議に思う人も多い。野党も「仮に導入するにしても、越境犯罪に限定すべきだ」と主張している。しかし、条約三四条二項に「(共謀罪などは)国際的な性質とは関係なく定める」と書いてあるため、政府与党は「法案に越境性を盛り込むことは無理」と突っぱねてきた。

 ところが、同じ条約の三四条一項は「条約は各国の国内法原則に従って実施すればよい」と、別のことを言っている。しかも、国内法原則重視が盛り込まれたのは、日本政府が要求したからだ。また、三条では「越境性のある犯罪が適用対象」とされている。頭がこんがらがってしまうが、実際に、越境犯罪に限定した共謀罪を立法した国もある。先の通常国会後の日弁連の調査によると、セントクリストファー・ネビスというカリブ海に浮かぶ人口約四万六千人の島国が二〇〇二年に越境性を前提とした共謀罪を制定、〇四年に条約を批准した。

■盗聴捜査

 共謀罪は、犯罪の実行、未遂、準備に至る前段階で摘発することになる。このため「共謀罪を活用するには、おのずと謀議を盗聴する捜査が必要になる」との指摘が、共謀罪法案の国会提出前から出ていた。電話盗聴、メールの盗聴、室内盗聴が広範囲に行われるようになるのではないか、というのだ。

 〇二年に森山真弓法相(当時)から共謀罪導入についての諮問を受けた「法制審議会」の刑事法部会でも、共謀罪に批判的な委員が「摘発のために盗聴が必要になるのではないか。また、そういうものがなければ効果のない条文になってしまうのではないか」と疑義を呈したが、政府側が「捜査手法うんぬんは条約上、義務とされているわけではない。今回の諮問は罰則整備であり、捜査手法などは、別途、検討、議論すべきテーマ」と、議論を封じ込めてしまった経緯がある。

 法曹関係者たちが言う。「捜査は犯罪の“可能性”があれば始められ、可能性がなくなった時点で中止され、逮捕もされない。その間に盗聴されても、自分たちには分からない。共謀罪ができたら『やましい点などないから逮捕されない』と、安心していられなくなるでしょう」

   ◇   ◇

 安倍晋三首相も共謀罪法案を優先課題と位置付けている。しかし、野党はおろか与党議員さえも、国連審議の詳細経緯や米国の「留保」の一件を、政府から聞かされていなかったフシがある。根本的な審議やり直しが必要になりそうだ。

<デスクメモ> 開会中の臨時国会に共謀罪法案が四たび提出される。安倍政権の本質を占うには格好のテーマだが、法案創設の根拠の怪しさも増している。「共謀罪は日本の法体系になじまない」と、かつて日本政府が主張していたことも判明し、これまでの答弁との矛盾も露呈した。一貫性がなさすぎるのではないか。 (吉)


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